九龍窠(きゅうりゅうか)の大紅袍は、枝はいうに及ばず、葉一枚だって、許可がなければ折ったり摘んだりはできない。
劉氏は九龍窠の大紅袍の味と香りに最も近い二世の誕生と育成を目的に武夷山市の許可を得て、貴重な大紅袍の枝を三十六峰九十九岩のどこに挿し木しようか、来る日も来る日も探し歩いた。
武夷山を知り尽くしている彼なら、どこの岩に挿し木をすれば九龍窠の大紅袍に限りなく近い茶に育つか、閃くに違いない。大紅袍の小枝を持って山を歩いていたある日、「ここに植えなさい」と、地霊の囁きを彼は聞き取ったのかもしれない。その種の能力を秘めた人でなければ、九龍窠の大紅袍とそっくりの大紅袍を、ほかの岩から作り出すことはできないだろうから。なぜならば、岩茶は岩が違えば、味も香りもまったく別ものになってしまう性質のお茶だからである。
左能典代著『中国銘茶館』(高橋書店)より引用
講演中には、8月に持ち帰ったばかりの今年の岩茶と、お菓子もご用意もしています。
講師:左能典代 (さのふみよ 作家・日中文化交流サロン ー 岩茶房店主)
出版社勤務後渡米、その間に南北アメリカ、東西ヨーロッパ、アフリカ、アジア諸国などを取材。帰国後、企画制作オフィスを設立。80年代初めより中国に惹かれ中国取材を開始し、主宰する日中文化交流サロン岩茶房は今年25周年。著書に『ハイデラバシャの魔法』(新潮新人賞受賞、新潮社)、『中国名茶館』(高橋書店)、『岩茶のちから』(文春文庫plus)、『青にまみえる』(新潮社)など多数。
時 間 |
11:00 ~ 12:30
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会 場 |
1F サロンウエスト
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受講料 |
3,000円
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定 員 |
40名
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