茶詩詞話〜「寒夜客來茶當酒」

<本文> 杜耒(とらい) – 『寒夜』より

寒夜客來茶當酒,竹爐湯沸火初紅。
尋常一樣窗前月,才有梅花便不同。

<解説>
 南宋末の詩人、杜耒によるこの詩は、冬の夜の静かで心温まる情景を描き、茶によるもてなしの心を美しく表現しています 。

 寒い夜、客が訪ねてきたので、酒の代わりに茶を出す。
 竹で編んだ風炉では湯が沸き、炭火が赤く燃えている。
 窓の外に見える月は、いつもと同じ月のはずなのに、庭に梅の花が咲いているだけで、その風情は全く違って見える。

 この詩の魅力は、前半の茶のもてなしと、後半の自然観照が巧みに結びついている点にあります。
 温かい茶は客人の体を温め、美しい梅と月は心を和ませる。物質的な豊かさではなく、ささやかながらも心のこもったもてなしと、自然の美を分かち合うことこそが、最高の贅沢であるという価値観が示されています。

 

<現代生活への応用>
 この詩は、ミニマリズムやシンプルライフに通じる現代的な感性を持っています。

 高価なものでなくても、心のこもったもてなしは可能であること、そして、日常の風景に少しの変化(この詩では梅の花)を加えるだけで、世界は全く新しく見えることを教えてくれます。 

 例えば、来客がある際に、部屋に一輪の花を飾ってみる。
 それだけで、いつもの空間が特別なものに変わります。
 杜耒の詩は、物質的な豊かさを追求するのではなく、今あるものに少しの工夫と注意を払うことで、生活を豊かに彩るヒントを与えてくれます。

(NPO中国茶文化協会 理事長/林華泰茶行・日本華泰茶荘 五代目店主 林聖泰)
——————————
2026新年茶会【茶熟・香温 × 茶韻・回甘〜温もりが香りを開き、時が余韻を伸ばす】

報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。