武夷岩茶の伝統的な製茶技術は、采摘(摘み取り)から装箱(箱詰め)までの16の工程(採摘、倒青、做青、初炒、初揉、復炒、復揉、初焙、揚簸、涼索、揀剔、復焙、吃火、団包、補火、装箱)で構成されています。

これらの工程の中で、武夷岩茶の品質、特に「岩韻(岩骨花香)」という特徴的な品質を決定する上で最も重要とされる要素、あるいは最も緻密な調整が求められる工程は、「做青(させい)/発酵と揺青を繰り返す工程」です。
岩茶做青工程の重要性とその特徴は以下の通りです。
1. 品質優劣のポイント
做青の工程は、「看青做青(茶葉の状態を見て做青を行う)」および「看天做青(季節や天候、温湿度を見て做青を行う)」の原則に基づいて、揺青(茶葉を揺り動かす作業)の回数や強さ、および晾青(茶葉を広げて冷ます作業)の厚さや時間を決定します。
この原則は、茶葉の品種、摘み取り時間、産地、老若の程度、倒青(萎凋)の程度など、多岐にわたる要因を考慮に入れて制御することを意味します。
2. 岩茶仕上がりの基準
做青が適切に行われた茶葉は、「緑葉紅辺(葉の縁が紅色で、中央が緑色)」の状態を示します。
その適度な発酵の程度は、「三紅七緑(3割が紅で、7割が緑)」であるとされています。
3. 伝統的な製茶工程
做青は、晾青と揺青を交互に、繰り返し行うサイクル作業です。
揺青の過程では、青葉を水篩(竹のふるい)の上で回転・転がし、茶葉同士や篩面との摩擦により、青葉に「緑葉紅鑲辺」を形成させます。揺青後は、青葉が張り詰めた「還陽」状態になりますが、次の晾青で「退青」(萎軟状態に戻り、青臭さが消える)させます。
揺青の過程では、青葉を水篩(竹のふるい)の上で回転・転がし、茶葉同士や篩面との摩擦により、青葉に「緑葉紅鑲辺」を形成させます。揺青後は、青葉が張り詰めた「還陽」状態になりますが、次の晾青で「退青」(萎軟状態に戻り、青臭さが消える)させます。
この「做青」は、生茶葉の持つ天然の特性(品種や生育環境)を最大限に引き出し、武夷岩茶特有の香りや味わいを形成するために、製茶師の熟練した技術と微妙な判断が不可欠な製茶工程です。
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伝統的な製茶工程における「做青」は、オーケストラの指揮者に例えることができます。
16つの製茶工程が楽器の演奏者だとすると、指揮者(做青)は、天候や茶葉のコンディション(演奏環境や楽器の状態)を瞬時に判断し、発酵という複雑な化学変化(楽曲のテンポや強弱)を的確に制御することで、最終的な「岩韻」(岩骨花香)というハーモニーを決定づける最も重要な役割を担います。
(整理・文章・写真:林 聖泰)

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