シアワセ瞬間(写真日記) 至福の茶時間 | Tea Happy Moments

台湾旅行⑥  茶文化を受け継いだのは、誰だったのか。

難病とともに本と歌で記憶を残す人、店・工場・家庭を守った人――
百年老舗から考える「見える継承」と「見えない継承」

茶文化の継承という言葉を聞くと、どのような人物を思い浮かべるでしょうか。
著名な茶師。
老舗の経営者。
専門書を書く研究者。
舞台で茶文化を語る人。
もちろん、知識や技術を言葉にし、次世代へ伝える人は重要です。

しかし、茶業が百年以上続くためには、表舞台に立つ人だけでは足りません。
工場を動かす人。
店頭に立つ人。
茶葉を運ぶ人。
帳簿を管理する人。
働く家族を家庭で支える人。

今回の台湾帰省と叔父さん林秀全博士の著書発表・番組試写会は、茶文化継承の「見える部分」と
「見えにくい部分」を考える機会となりました。


科学、芸術、旅行を通じて残す家族史

2026年7月18日、台大校友会館で、林華泰茶行第四代を代表する林秀全博士の二冊の著書を紹介する記念会と、
台湾知名な番組、華視『人物大特写』の試写会が行われました。

会場には林家の親族、台湾大学の同級生、国内外の友人、茶行関係者らが集まりました。
林秀全博士は、台湾大学数学系で学び、渡米後はベル研究所で研究に携わりました。
また、歌劇や世界旅行を愛し、著書を通して林華泰茶行の家族史、大稲埕の記憶、研究生活、旅、人生観を記録しています。
これは、文章、学問、芸術を通じた文化継承です。


パーキンソン病とともに伝え続ける

叔父さん林秀全博士は現在、パーキンソン病と向き合いながら生活しています。
発話や身体の動きに困難がある中でも、自ら来場者の本に署名し、舞台に立ち、歌を披露しました。
話すことが難しくなったからこそ、まだ可能なうちに人生の記録を残したいという思いが、
執筆を続ける力になっていると報じられています。
この姿は、「病気に打ち勝った」という単純な成功物語ではありません。

病気は今も日常に存在し、不自由や困難も続いています。
その中で、自分に残されている能力、経験、言葉、音楽を使い、次の世代へ何かを手渡そうとしている。

そこに重要な意味があります。
文化を伝える人は、常に健康で完全な状態にあるとは限りません。
高齢、病気、障害、生活環境の変化を抱えながらも、それぞれに可能な方法で記憶を残す人がいます。

会話が難しければ文章で残す。
短い言葉しか出なくても、歌で表現する。
長く歩けなくても、人が集まる場所に参加する。
文化継承とは、その人が現在持っている力を尊重し、それを次へつなぐ営みでもあります。


店に残った長男の継承

一方、林秀全博士より十五歳以上年上だった長兄、華泰茶荘五代目店主・林聖泰の父は、異なる形で茶業を継承しました。
家族から伝えられてきた話では、社会が大きく変動する時代に進学を断念し、若い頃から長男として家業と家族を支えました。
三十歳頃まで祖父母とともに林華泰茶行に泊まり込み、工場で働きながら、弟妹を含む家族全体の生活を支えたといいます。

弟妹が進学する。
海外へ渡る。
専門的な仕事に就く。
文化活動へ挑戦する。
そうした可能性の背景には、店に残り、家計と家業を担った人がいました。

その後、父と母も店頭、工場、家庭を支え、茶業の日常を守り続けました。
これは、工場労働、家族経営、生活維持を通じた文化継承です。


「継承者」は一人ではない

老舗の歴史を紹介する際、私たちは「何代目」という一人の人物を中心に語りがちです。

しかし、実際の継承は一人では成立しません。
ある人は茶葉を選ぶ。
ある人は製茶や精製を担う。
ある人は帳簿を管理する。
ある人は顧客との関係を維持する。
ある人は家族の食事や子育てを担う。
ある人は歴史を本に書き残す。
ある人は講座や記事を通して、その歴史を社会へ伝える。
役割が違うだけで、それぞれが継承者です。

著名な人物だけでなく、工場、店頭、包装、会計など、記録に残りにくい仕事へ目を向けることで、茶文化の実像が見えてきます。


茶文化を「技術」だけにしない

中国茶・台湾茶の教育では、品種、産地、製茶工程、香気滋味、抽出方法を学びます。
しかし、技術だけでは茶文化の全体像には届きません。

茶業を営む家族は、どのように暮らしていたのか。
店や工場の中で、子どもたちは何を見て育ったのか。
誰が進学し、誰が家業を引き受けたのか。
女性や高齢者は、どのような役割を担っていたのか。
病気や身体の変化を抱えた時、人はどのように経験を次へ渡すのか。

こうした問いを持つことで、茶は単なる商品や技術ではなく、社会と生活の中で形成された文化として見えてきます。


写真、声、証言を残す

今回のスタジオ写真には、台湾茶を囲んで座る家族の姿があります。

現在は楽しい記念写真でも、数十年後には重要な文化資料になる可能性があります。
誰が写っているのか。
なぜ集まったのか。
その人は、家族や茶業の中で何を担ったのか。
説明が残されなければ、次の世代には分からなくなってしまいます。
茶文化を守るためには、茶葉や茶器だけでなく、次のようなものも残す必要があります。

古い帳簿と取引証明。
工場や店舗の写真。
包装紙や茶箱。
家族の手紙。
仕事の道具。
年長者の語りを録音した音声と書かれた文章。

文化継承とは、過去と同じ方法を繰り返すことだけではありません。
誰が、どのように、何を守ったのかを忘れないことも、重要な継承です。


中華茶講師協会 理事長からの提案

ご自身の教室や家庭で、参加者の「お茶の記憶」を聞いてみてください。

初めて飲んだお茶。
家で使っていた茶器。
昔の茶店の様子。
季節のお茶と食事。
小さな記憶でも、今記録しておけば、将来の貴重な資料になります。

中華茶講師協会では、茶の淹れ方や専門知識だけでなく、一杯のお茶を支えてきた人、
仕事、家族、地域の歴史まで伝えられる講師の育成を大切にしています。

茶は、人が作り、人が守り、人から人へ手渡される文化です。

その最初の一歩として、まず身近な人の話を聞くことから始めてみませんか。

(中華茶講師協会 理事長 林 聖泰 より)

一般社団法人 中華茶講師協会

中華茶講師協会では、台湾茶・中国茶を、茶葉の知識だけでなく、歴史・建築・食文化・生活文化とともに学ぶ講座を開催しています。台湾旅行をより深く楽しみたい方、茶文化を総合的に学びたい方は、ぜひ協会の講座やイベントにご参加ください。


『茶風味輪・国際評茶師講座』、今年始動。
https://www.chinatea.co.jp/chatea-blog-20260705/

中華茶講師協会主催の『台湾国際評茶師本講座』
2026年10月第4期【初級台湾国際評茶師 資格認定講座】


【保存版】中国茶・台湾茶、選ぶ・淹れる・味わうが10分でわかるノート
▶︎ https://note.com/chatea5/n/n4624c64b530a

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東京都

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