台湾中元帰省旅行⑥ 「合格」で終わる資格にしない――日本の受講者の声を台湾茶研究の現場へ

資格試験に合格したら、茶の勉強は終わりなのでしょうか。

私たちは、むしろ逆だと考えています。
「合格したあとに、もっと知りたくなる」。
そんな教育でなければ、本当に意味のある茶資格にはならないのではないでしょうか。

8月21日、台湾滞在中に桃園・楊梅の農業部 茶及飲料作物改良場を訪問し、
蘇場長と約二時間にわたり意見交換を行いました。
今回の訪問で私たちが台湾へ届けたものの一つは、資料でもお土産でもありません。
日本で実際に台湾茶を学んでいる受講者の「声」でした。


日本の受講者は、何をもっと学びたいのか

今年、日本では『第4期初級台湾国際評茶師講座』を開催します。
さらに、世界初の『中級台湾国際評茶師講座』の評茶教育についても、新しい段階へ進もうとしています。

今回の会談では、

  • カリキュラム
  • 日本語教材
  • 評茶実習
  • 台湾特色茶風味輪
  • 筆記試験
  • 実技試験
  • 学習後の継続教育

などについて、具体的な意見交換を行いました。

しかし、制度そのものと同じくらい大切なのが、「学ぶ側は何を求めているのか」という視点です。
日本の受講者からは、
「もっと多くの茶葉を比較したい」
「香りや滋味を言語化する力を高めたい」
「産地・品種・製法の関係をもっと体系的に学びたい」
「試験対策ではなく、実際の評茶力を身につけたい」
「資格取得後も継続して学びたい」
といった意見が寄せられています。

こうした声を今回、茶改場へ直接伝えました。
茶改場側からも、今後の教育内容を改善していくうえで参考にしたいとのお話をいただきました。


教育は「台湾→日本」の一方通行ではない

ここに、国際的な茶教育の大切なポイントがあります。

台湾で作られた知識を、日本へ持ってくる。
それだけでは十分ではありません。
日本で実際に学んだ人の反応を台湾へ返す。
そして台湾側の研究や検討を経て、また日本の教育へ戻していく。

つまり、「台湾 → 日本 → 受講者 → 台湾 → 次の教育」という循環です。
私たちは、この循環こそが国際資格を育てていくのだと考えています。


「冷たいお茶」は、茶教育と関係ないのか

今回もう一つ興味深かったのが、茶改場が研究・開発を進める冷萃・低温抽出系の茶飲料でした。
一見すると、資格教育とは関係がないように見えるかもしれません。
しかし実は、非常に関係があります。
抽出温度が変われば、
香気、苦味、渋味、甘味、滋味、余韻の現れ方も変化します。

つまり、私たちが「評茶」で身につけようとしている感覚は、伝統的な熱湯抽出だけに使うものではないのです。
これから新しい茶飲料が増えていく時代だからこそ、
「おいしい・まずい」だけではなく、何がどう違うのかを説明できる力
が、ますます重要になります。

これこそ、評茶教育を学ぶ大きな意味の一つです。


台湾全島を「教科書」にする

今回見せていただいたもう一つの興味深い資料が、
『Taiwan Tea Journey/臺灣茶旅行』の試読版です。
そこには台湾各地の茶園、製茶工場、茶文化施設などがまとめられています。
茶を学ぶとき、茶葉だけを見ていては分からないものがあります。

なぜ、その土地でこの品種が育つのか。
なぜ、その製法になったのか。
なぜ、その香りが「その土地らしい」と感じられるのか。
茶園へ行き、製茶場へ行き、作り手と話して初めてつながる知識があります。
だから台湾国際評茶師では、単なる筆記試験・実技試験だけではなく、「産地を知る」という学びも大切になります。

評茶は、茶杯の中だけで完結するものではありません。


資格制度で一番避けたいこと

資格制度を運営していると、どうしても
「何点で合格ですか」
「試験には何が出ますか」
という質問が多くなります。

もちろん、試験ですから基準は必要です。
しかし私たちが一番避けたいのは、「合格すること自体が目的になる」ことです。
資格証書は、茶を極めた証明ではありません。

むしろ、
「ここからもっと深く学び始めるための入口」であるべきです。
茶を比較する。
違いを感じる。
言葉にする。
産地へ行く。
作り手と話す。
そして、自分が学んだことを次の人へ伝える。
そんな「学び続ける茶人」を育てることが、中華茶講師協会の役割だと考えています。


この日は風雨の中、台鉄で楊梅へ向かいました。
二時間近い会談を終えるころ、不思議なことに雨は上がっていました。
日本の受講者の声が台湾へ届き、台湾の研究がまた日本へ戻ってくる。
小さな往復ですが、その積み重ねが、台湾茶教育を一歩ずつ前へ進めていくのだと思います。

(文章・写真:中華茶講師協会理事長・華泰茶荘五代目店主 林聖泰)


実際の茶で、次の一歩へ

2026年10月 第4期

「初級台湾国際評茶師 資格認定講座」
台湾特色茶10茶類を、外観・香気・水色・滋味・葉底から体系的に学び、風味輪を使った言語化と評茶実習へ進みます。
▶︎ 初級台湾国際評茶師 詳細・申込

「資格を取る」から、「茶を読み解ける人」へ。
台湾と日本を往復しながら、これからもそのための教育を育ててまいります。

報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。