中華茶講師協会『茶韻』2026/6/2号 特集研究 【抹茶の需給と「日本茶」GI】そして中国の台頭

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特集|抹茶の需給逼迫と「日本茶」GI、そして中国の台頭
   ── 講師が線引きすべき「抹茶」の定義
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【結論】
世界的な抹茶ブームで、日本産碾茶は供給が逼迫し、相場が
高騰しています。一方、中国産の「抹茶」が輸出を急伸させ、
世界生産の約7割を占めるに至りました。
ただし両者は、原料も製法も異なります。講師として問われる
のは、「抹茶」という語をどこで線引きし、受講者にどう説明
するか ── その一点です。


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■ 1|日本側 ── 碾茶シフトと、相場の高騰
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  ・鹿児島が一番茶の荒茶生産量で全国1位に。2025年産は
    8,440tで、静岡(8,120t)を逆転。1991年の調査開始以来
    初めてです(出典:南日本新聞・農水省統計)。海外需要の
    高い碾茶への転換が要因と県は分析しています。
  ・2026年産新茶の初取引(鹿児島・4月6日)は、平均6,573円/kg
    で前年比+2,436円。最高値は3万円で平成以降の最高でした
    (出典:南日本新聞 2026年4月6日)。
  ・「日本茶」のナショナルGI登録が、最短6月下旬に成立する
    見込みです。国内で栽培・加工を完結した不発酵茶が対象で、
    海外の「宇治抹茶」模倣品対策が主眼(出典:日本経済新聞ほか
    2026年5月11日発表/パブリックコメントは6月11日締切)。

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■ 2|中国の台頭 ── ただし「抹茶」とは何か(本特集の核)
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  ・浙江省の抹茶輸出は、2026年第1四半期に1,241.97t、
    前年比7.3倍(出典:央視財経・人民網 2026年5月27日、
    海関総署データ)。
  ・中国の2025年の抹茶生産量は1.2万tを超え、世界の約7割
    (同上)。

ここで言う「抹茶」は、日本の抹茶と同じものではありません。
報道自身が「抹茶=緑茶を蒸して微粉砕した粉末」と定義して
いるとおり、覆下栽培の碾茶を石臼で挽く日本の抹茶とは、
原料も製法も異なります。
「世界シェア7割」は、この広い定義の上に立つ数字です。

  項目  ┃ 日本の抹茶      ┃ 中国産「抹茶」の多く
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  栽培  ┃ 覆下(被覆)      ┃ 露地が中心
  原料  ┃ 碾茶(蒸製)      ┃ 蒸青/炒青の緑茶
  粉砕  ┃ 石臼挽き        ┃ 機械粉砕

【講師への含意】
受講者が市場で出会う「matcha」は、もはや一様ではありません。
「碾茶を石臼で挽いたものを抹茶と呼ぶ」という日本の定義と、
海外流通の「matcha=緑茶粉」とのギャップを説明できることが、
これからの講師の実務リテラシーになります。


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■ 3|台湾の対照 ── 価格でなく「産地保証」で
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  ・阿里山は乾燥の影響で約3割の減産と伝えられる一方、特定
    産区の品質は維持されています。
  ・比賽茶(コンクール茶)では、DNA鑑定と農薬検査が標準工程
    として定着。産地偽装を技術で防ぐ「保証」型の戦略です。

日本のGI、台湾のDNA鑑定、中国の量産・低価格 ── 東アジアの茶が
三者三様の「信頼の作り方」で動いている構図が見えてきます。

  型    ┃ 仕組み           ┃ 担保するもの
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  日本  ┃ GI(地理的表示)   ┃ 産地・加工地
  台湾  ┃ DNA鑑定+農薬検査 ┃ 品種・安全性
  中国  ┃ 量産・低価格     ┃ 供給量・コスト

【教学への転用】
  ・「抹茶」と「matcha」の定義差を、一枚の対比表で示せる
  ・GI/DNA/価格 ── 三者三様の「信頼の作り方」を講座素材に
  ・日本産碾茶抹茶と中国緑茶粉の飲み比べを、ISO 6078 の
    用語で記述する実習設計

(写真・文:林 聖泰)
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